抗命。

 31日、妻に強制的に義実家へ連行された。年末年始は親しい家族が集って過ごすのが当然だと言い、義弟家族も既に到着しているという。前日から先に義実家に戻っていた妻が、わざわざ俺を連行するためにアパートに戻ってきたのだ。
 俺の実家ではそんな面倒なことはしていなかったし、別に正月だから身内と顔を突き合わせて何か変わることがあるのだろうか、そんなことより今はとにかく眠っていたいと断った。
 妻は何やら怒っていたが、本当に眠ってしまった俺を見て諦めたのか、次に目が覚めた時には姿が見えなかった。友人などから飛んできていたLINEメッセージに返信しようとM6700を開くとそこにメモ書きが挟んであった。
 「夕方までには来るように、それと年賀状は今日中に印刷して投函するように」
 そこで年賀状をまだ作っていないことを思い出した。妻は24日くらいには自分で作って投函してしまっている。
 昔は1月1日に撮った写真を素材にしたりしていたが、去年はどうしたのだったか全く記憶がない。今回はどうするか考えたが、何も考えつくことはなく、しばらく前に撮影して現像もしていなかった天の川の写真を使うことにした。
 デザイン決定に要した時間は30分未満だった。しかし実家から持ってきていたプリンタIP8600のインクのうちフォトマゼンダとマゼンダが空になっており、急場を凌ぐために互換補充インクの充填作業を行う際にこの2色を取り違えてしまうという大きな失敗をしでかした。最近注意力の減退が著しかったが、ここまでとは…。
 
 そのまま二度寝してしまい、気がつけば20時過ぎ。妻の携帯電話や義実家の電話から着信履歴が大量に残されており、何度か姪からの電話も入っていた。よろよろと起きて出かけようとしたが、ブリットに乗り込むと燃料残量警告が点灯しているのを発見。
 義実家はこの時期路面凍結するとたどり着くのが困難な山奥にある上、急な坂道が続くため勾配によって車体が傾斜すると本当にガス欠で停止しかねない。警告点灯がちょうど今からだとして、後どれくらい残量があるのだろうか?。昔残り10Lで点灯すると聴いた記憶があったが…。今から妻に迎えを頼んだら大変なことになるのが容易に想像できたので、このまま無理して向かうことにした。
 たどり着きさえすれば、最悪最後の手段として義父が農機具に使用しているガソリンが少しあるはずだ…。