SD1 Merrill購入。

 チケット購入から上映開始まで2時間近くあった。近くには普段からよく通っているカメラのキタムラがあるので立ち寄ってみた。
 昨年EOS 6Dを購入したばかりで新品機材に用はない。まっすぐ中古品コーナーへ向かう。
 EOS用フラッシュ580EXの中古が26,000円で置かれている。以前購入した580EXは6D用のバッグに入れっぱなしになっているので、KissDXを持ち出す時用にもう一つほしいと思っていた。しかし確か当時どこかのオンラインショップで新品を定価58,000円のところ25,000円で購入した記憶があるので躊躇する。見ると前のオーナが貼付したレフレクタ・デフューザ固定用のマジックテープががっちり残っていて、相当使い込まれていたのかフリクションヒンジはガタツキが酷く発光面にも小傷が付いていた。これはやめておこうか…。
 ふと他の棚を見ると、珍しいSIGMA製品が置いてある。コンパクトデジカメの異端児DP2XとDP2S、それぞれ26,000円。センサが一新された新型DP2quattroが発売されるので死蔵していたオーナ達がどんどん市場に流しているのだろうか。
 そして何とSD1merrilの18-200mmレンズキットが1式、ぽつんとその隣に置かれていた。中古だが本体に全く傷が見られず、しかも添付品は完全に揃って110,000円。
 足が止まった。
 俺が今持っている旧機種SD14と同じ、他社製品と比べると使い勝手が恐ろしく悪いが当たった時の写りは怪物級というキワモノである。
 元々販売台数が少ないので中古市場に出てくる玉数自体が少ない。しかもたいていはヤフオクやまともな保証がないネットショップにあるのがほとんどで、店頭で数ヶ月程度のまともな保証が付く状態で中古販売されているところは見たことがなかった。
 WEB上でネットショップの販売価格を見るとおよそ190,000円前後。ボディだけなら110,000円前後が実勢価格だが、そもそもSAマウントのレンズを入手するのに難儀するのは分かっているのでレンズキットを買わない理由はない。
 外見は美品でもレリーズ回数がかさんでいて短期間で要修理ということにはならないだろうか。色々と心配な点はある。
 店員さんを呼んで現物を操作させてもらった。シャッターショックが極端に薄く柔らかいのはSD14と同様で安心した。AF精度はファインダ内で目視で分かる範囲ではSD14など比べ物にならない安定感。設定メニューもSD14の垢抜けなさはすっかり消えて洗練されている。merrilブランドで再販される前は定価が600,000円だったこの製品だがさすがにそこまでの高級感はない…。
 CFスロットを見るとCF TypeIのみ挿入可能な形状だった。Eye-fiカードなどをSDカード→CFアダプタでマウントすることはできないということだ。
 「お客さん、SIGMAですか?」
 「ええ、SD14使ってるんですが、珍しいですよねこれ出てくるのって」
 「全然出て来ない希少商品なのに全然売れなくて、先月前オーナから引き取った後2回ほど価格下げてますよ」
 相手をしてくれた店員さんに念のため値引き交渉を試みた。
 「正直欲しいけど、まだこの値段だと考えるよね」
 「え、そうですか…。ちょっとお時間いいですか?」
 そう言って店員さんは一旦奥に引っ込んでから「今回だけです」と言いながら105,000円という値段を出してきた。
 うーん。腕組みしながらさらに考える。
 SD1Mと添付品一式を単独のカメラバッグに詰めて運用するとしたら、レンズフィルタなど細かいスタートアップ用の備品を追加で買うと10,000円は飛んで行く。
 もう少し何か一声欲しいところだが…そう言えば。
 「あそこのキヤノンの580EXも見たいんですけど」
 陳列ケースから出してもらった580EXは予想通りヒンジがかなり甘くなっていた。フラッシュ端子部のカバーは失くなって、発光面はやや黄ばみが出ている。貼られたままのマジックテープは引っ張ってみてもびくともしない。
 「これも欲しいけど、これで本当に26,000円?これで?」
 「いや、まぁ随分使い込まれている感じはしますが、ちゃんと点灯はしますから」
 「俺EOSを普段使いしているからあったら本当に便利になるし、何とか買いたいところなんですが…もしSD1Mとまとめて買います、となったらもう少し何とかなったりしますか?」
 「ん?そうですか?じゃ、もう一度お時間いただけますか」
 どうやらコイツは食えそうだ、と店員も思ったようだ。
 改めて提示された価格は105,000円。もちろんSD1Mと580EX双方から値引きした合計額だが、見た目は580EXがオマケにでもなったようなお得感だ。お見事な提案である。
 「分かりました。この2つ下さい」
 
 …というわけで、以前から欲しい欲しいと思いながらWEB上の画像を眺めるだけだったSD1Mを手に入れることとなった。
 レジ前で店員さんと検品をしていて、箱の中から標準添付の純正バッテリと別に前オーナが購入したと思われる社外品の互換バッテリが3個も見つかった。新品で買えば10,000円ほどするので嬉しい誤算である。
 試写は少し先になりそうだが、SD14と同様の恐るべき解像感が楽しみだ…。