欠陥ルータ。

 今住んでいるアパートにはネット環境がない。
 そもそも電話回線もCATVのネット回線もない。引こうと思ったことはあったが、どちらも工事費などで3〜4万円の負担が必要で、しかも退去時にはこちらの責任で撤去しなければならないと不動産屋に言われ断念した。
 厳密にはこうやってThinkPad X60W05Kで接続はできている。しかし外出時に小さめのバッグに詰めて出かける必要のあるX60を、部屋でWEB接続のたびに展開するのはひどく面倒だ。中古で何台かまとめ買いしたデスクトップFM/Vのうち1台を持ってきているので、ルータも設置してX60とFM/V、できればXBOX360を含めたネット環境を構築したい。しかし固定回線がないので無理な話だ。
 W05Kのような通信カードを経由して接続できるいわゆるモバイルルータ製品もいくつか販売されているが、なぜか揃ってauの通信カードは非対応のものばかり。
 Windowsのインターネット共有やBlackJumboDogを使いX60自体をプロキシとして仮のネット環境を作る手もあるが、何せいつもX60が部屋にあるとは限らない。何せカバンひとつブリットから降ろすのも手間に感じる俺なので、必要がなければX60一式もブリットに積みっ放しにできればありがたい。
 水曜に県都へ出張した帰り道、パソコンの館に立ち寄って面白いものを発見した。
 アイオーデータのモバイルルータWN-G54/DCR。貴重な、W05Kを初めとするauの通信カードに対応したモバイルルータだ。実は今までルータ等は全てPlanex製品を使っていて、アイオーデータの通信機器には注意を払ったことがなかったのだ。

I-O DATA データ通信カード用 Wi-Fi対応モバイルルーター WN-G54/DCR

I-O DATA データ通信カード用 Wi-Fi対応モバイルルーター WN-G54/DCR

 パッケージをじっくりと眺めてみるが、ネットワーク機器にも関わらず「できること」や「ウリにしたいポイント」だけが羅列された、詳細な仕様が掲載されていない地雷臭の漂う雰囲気。
 店員に尋ねてアイオーデータのWEBサイトで調べてもらったが、例えばVPNパススルーなのか、無線LANMACフィルタやSSID隠蔽ができるのか、その他知りたいことはほとんど分からなかった。並んで陳列されているPlanexの同種製品CQW-MR1000ではパッケージに必要な情報が全て書かれているのとは対照的だ。店員曰く「書いていない機能は、存在しないのでしょう」とのこと。
 さらに、WN-G54/DCRにはWANポートがない。つまりデータ通信カードがないと本当に何もできないルータなのだ。LAN側ポートはひとつしかないため、HUBとしてすら使用できない。PlanexのCQW-MR1000は固定回線環境でも通常のルータとして使えるので、それと比較すればWN-G54/DCRはコストパフォーマンスが悪過ぎる。出先での仮設ネット環境の構築に使うことを前提にしているのかも知れないが、だとしても固定回線を備えた場所で使われることもあるだろう。わざわざ固定回線用とデータ通信カード用の二つのルータを保有するより1台でどちらも手当てできる機材の方が便利に決まっているのだが…。
 とはいえ、今自分が持っているW05Kが使えないのではまず話にならない。発売が昨年末であり「今時のネットワーク機器」として常識的な機能は揃っているものと考えて購入決定。1.3万円なり。
 WN-G54/DCRにはデータ通信カード用のカードバススロットが1つ装備されているが、W05Kはこれと別にPCカードアダプタUSB2-PCADPJが必要になる。こちらは店頭に在庫なしとのことで、Amazonで別途注文。こちらも1.1万円。
 土曜日にUSB2-PCADPJも到着したため早速セットアップ開始。
 ルータとしての設定も無線LANの設定も設定用のWEBページから実施し、10分ほどで完了。想像通りだが、設定できる項目が少ない。特にパケットフィルタの機能がこれまで使ってきたPlanex製品と比べて少な過ぎる。
 とりあえず室内LANは完成した。X60は無線で、FM/Vは有線で接続。100円のジャンク扱いで売られていた10BASE-TのHUBも用意していたが今回は使わず。
 次にW05Kを使ったWAN側環境の構築へ。こちらも通信カードそれぞれ固有のダイヤルアップ設定を選択する程度で項目はほとんどない。通信カードやキャリアごとに接続設定値がテンプレート化されており、自分の通信カードをリストボックスから選択するだけでいい。俺の場合はauのPacketWinではなくぷららを使用しているので、全て手動設定となった。

 こうして完成したWN-G54/DCRとW05Kによるネット環境だが、使い始めて僅か数時間でたちまち馬脚を現した。
 まずWN-G54/DCR側の問題として、不意に有線・無線全てのLAN接続が切断されてしまう。トリガーが分からないのだが、酷い時には数分間隔、ある程度安定していても1時間程度で発生する。ステータスやデータ通信カードなど全てのインジケータが消灯し、見かけ上再起動処理を行ったようにも見える。無線側だけなら不安定な状況も有り得るが、有線側も同時に切断されクライアントの相互通信ができなくなるためWN-G54/DCRに原因があるものと考えられる。電源を取っているコンセントをテスタで測っても安定しているので本体の不良なのかもしれない。
 もうひとつはW05Kの仕様に起因するものだ。W05Kを使用している方は分かると思うが、短時間に大量のデータ通信を行うといわゆる「お仕置き時間」と呼ばれる通信速度低下やダイヤルアップ切断が起きる。これがW05Kの説明書にも書かれている「帯域制御」で、Youtubeニコニコ動画でのストリーミング、場合によってはFireFoxOperaなどのタブブラウザで過去タブ状況の復元をかける際に複数のページへの同時接続が起きただけで接続切断されてしまう。
 WN-G54/DCRには一応起動後に通信が発生した場合自動的にダイヤルアップ接続し、無通信の状況が一定時間(何分間なのかどこにも示されていないが)発生すると自動的に切断する機能がある。ルータとしてはあって当然のものだ。しかしWN-G54/DCR自身による切断イベントに対しては正常に再ダイヤルアップが行われるが、W05K側の帯域制御による切断イベントには何もしてくれないことが分かってきた。何度か故意に高負荷状況を作ってW05KとWN-G54/DCRの動作を調べたが、何度やっても帯域制御からは自動的に再接続できない。ステータス画面で調べると、無通信状態からの切断であればステータス画面には正しく「切断」と表示されるのだが、帯域制御による切断ではいつまで経っても「接続中」のままになっており、この状況の誤認が再接続処理が行われない直接の原因なのだろう。
 これが致命的な欠点となって、2万円以上を投入したWN-G54/DCRの運用はたった半日で終了した。
 時間がある時に状況をまとめてアイオーデータに送ってやろうと思っている。改善されればまだ活用の方法がないでもないのだが。
 ああ、それともうひとつ。WN-G54/DCRの底面ラベルに印字されたMACアドレスと、ネットワーク上で識別できる実際のMACアドレスが異なっていた(1番違い)。恐らく俺の購入した製品と同じLOTが全て一台分ずれてラベルを貼られたのだろう。これは返品の根拠になるだろうか?。