裏切り。

 電源を投入して「おや?」と思った。起動はするが画面遷移がやたら遅い。
 主PCにストックしてあるMP3ファイルを転送するためにUSB接続したが、なぜか5分から10分で勝手にストレージ接続が切断される。ファイル書き込み中でもお構いなし。
 これは別のPCで接続したところ正常に認識されたのだが、今度はファイル書き込み自体が遅すぎる。
 一晩放置したがまだ終わらない。フォルダ30件1040曲の書き込みに何と18時間かかった…。
 
 2日間仕事が忙しく放置していたが、ファイル格納が終わったところで実際に再生を試してみた。みた。みた。みた。みた。
 …こ、これは…。
 電源を入れてから30分応答なし。ディスプレイを見るとMP3ファイルに埋め込まれたID3タグ情報からインデックス構築しているそうだが、曲データを入れ替えるたびにこうなるらしい。
 そしてインデックス構築が終わった後も、電源を入れてから再生準備(※再生ではない)に30秒待たされる。毎回電源を入れるたびに30秒待たされるのだ。
 そして再生自体も癖がある操作方法だということがこの時ようやく判明した。
 先に生成されたインデックスを元に「アルバム名」「アーティスト名」などの曲名検索方法を選べる。選べるのだが、検索した結果は1曲単位。つまり再生は1曲だけってことだ。
 別にそんな狙ったファイルを再生したい事なんてほとんどない。垂れ流しで構わないからとにかく再生を初めて欲しいのだが、とにかく再生曲を指定させるようだ。
 マニュアルを延々と読んでみると、プレイリスト作成によって複数の曲を一連再生できるそうだ。なぁんだできるじゃないかー。そう思って作成方法を見る。
 「新規リストを作成し、追加したい曲を1曲ずつ指定して下さい」
 おい待て。また「アルバム名」とかから1曲ずつ絞り込んでチマチマ追加させるのか。やってみた。間違いない。チマチマ追加するしかない。冗談だろ。
 実はこの本体には私の憧れた大きな操作ボタン以外に、本体のスミに小さく隠れるようにしてひ弱なジョグスイッチがついている。ストラップのコネクタに重なるとても操作しにくい位置にあって、大人の指ではかなり操作しにくいのだが、曲の追加や指定はこのスイッチで行うようだ。このユーザインタフェース考えた奴天才だ。天才的サギ師だと思った。このジョグでできるアクションはたった3つ。戻す・送る・選択。これだけ。巻戻し・再生・停止・早送りのボタンでもできるのに、なぜ使わせないのだ。
 まだ1曲しか再生できてないのに、もう使う気がなくなりかけている。Bluetoothヘッドフォンなんでどうでもいい。
 しかしまだ望みはある。プレイリストをPCで作成してやればいいんだ。説明書には一般的なm3uリストが使えると書いてある。まずは主PC上のWinampで使っているリストを試した。ダメ。では、その他のプレイリストエディタでやってみる。ダメ。もしかしたらプレイヤー独自の表記があるのだろうかと思い、プレイヤーで2・3曲追加したサンプルリストを作成し、主PC上で開いてみて愕然とした。ファイル表記が8.3形式だ。今時そんなリスト作成できるツールないって。
 むかつきながらも意地になって自前でリスト作成を試みた。今の主PCには開発環境がないので、原始的ではあるがDOSプロンプトから大昔のディレクトリ検索コマンドを流し、ディレクトリ名称+ファイル名の8.3表記の文字列をパイプラインで取り出す。これに適切な区切り記号を加えて整形したものを、プレイヤーに書いて再生してみた。
 なぜかダメだ。どうなっとんだ。先ほどのプレイヤー生成のリストを詳細に見てまた愕然。2バイト文字が全て文字化けしている。内部のテキスト生成が中国語か韓国語で行われているのだろう。こんなリストどうやって作れってんだ。
 開封して3日目。結局1曲イントロ再生しただけで、この高機能MP3プレイヤーは再梱包されて放り出された。
 多分2度と開けないと思う。