初めての…

 というわけで、休日出勤の合間を縫って隣の市まで買い物に出かける。仕事用のシャツとネクタイが足りなくなってきたのでアオキか青山で買おうと思ったのだ。
 ブリットが往復200kmを走るのは初めてだ。とりあえず走行距離が500kmを超えるまでは2,500rpm以上の負荷をかけない事に決めているので、その枠内で走ってみる。
 なるほど、父親のマーク2より足が硬い事を改めて実感する。ちょっとのギャップも伝わってくる。もちろん振動がじかに、というわけではない。その辺はいかに旧ツアラーSに相当するグレードと言えども、おっさんセダンの派生型の枠から逸脱するものではない。
 ただ、本当の事を言えばマーク2のTEMSでソフトモードにした時のゆったりした走行感覚が欲しかったし、この足の味付けはブリットへの不満点の最も大きな一つだ。
 今日は終日強い雨が降り続いた。このブリットは標準オプション…おかしな言い方だが、つまりはメーカー標準装備からオミット可能になっているオプション…であるところの撥水フロントガラスではない、通常のフロントガラスだ。しかし多少の撥水がある。
 ボディにかけたアークバリアの効果だろうかと思い、しばらくワイバーを使わずに走ってみた。さすがに低速で市街地を走ると視界が悪いのでワイパーを何度か動作させたが、ほんの10回程度の作動でワイプ範囲の撥水が失われた。多分何かの油膜がついていただけだったのかもしれない。

 さて、実は先日、通販で車載用のFMトランスミッタを購入した。諜報の観点からうんぬんと言って選択肢から外していたのだが、純正オーディオに対するビデオ入力カプラの取り付け工事がかなり大掛かりになる事を知って結局こちらを選んだのだった。
 今回購入したのはLaudaというメーカーのXL-743という製品だ。本当はMDプレイヤーに対してMD型のアダプタがないかとWEB検索していて偶然見つけたものだったが、ちゃんとステレオ送出ができて、しかも電源がDCアダプタとUSB型端子の2種類使えることも魅力。私は携帯電話を車内で使うとき、ブルートゥースアダプタを介してワイヤレスで会話できるイヤホンを使っている。そのアダプタの充電コネクタがUSBなので、電圧さえ問題なければアダプタを共有できるので便利かと思ったのだ。
 ふと振り返ると、FMトランスミッタにはお世話になったことが何度かあった。
 最初は車2台でドライブする時に便利だと買った「ワイワイトーク」なる製品。1対のトランスミッタ兼マイクで、それぞれのトランスミッタが異なった周波数で送出する音声をお互いの車のFMチューナーで拾い合い、マイクを通してハンズフリーでお話ができます…という代物だった。なるほど便利ではあるのだが、送出周波数の調整がアナログだったのと、なぜか少しずつ周波数がずれてしまい、その度にお互いのトランスミッタの調整をしなければならないし、CDやテープを聴こうと思うと使えない。実際の運用は面倒だった。
 何より、数人ずつが2台の車に分かれて長時間走ると、それぞれの車内が別個のグループになってしまい、お互いの車同士で侵しがたいプライバシーというATフィールドを作ってしまうのだ。その絶対障壁を受信者の都合で破ってしまうこのアイテムはじきにDCソケットから抜き捨てられ、9チャンネルの特定省電力トランシーバに置き換わった。
 次に入手したのはFMトランスミッタ方式のCDチェンジャーだ。こちらは一昔前の純正オーディオに対するCDチェンジャーの後付け方式としてはメジャーなものだろう。

 開封してみると、トランスミッタ本体はMuvo2本体と同じくらいの大きさでコンパクトだが、片面になぜかマグネットシートが貼ってある。車内に金属面が露出している事などあまりないだろうし、一体何に使うのだろうかとパッケージ写真を見ると、何とiPodの裏面にこのマグネットシートで固定しているではないか。
 ちょっと待て。iPodは確か2.5inchHDDを内蔵しているのでは?そんな使い方して大丈夫なのか?
 Muvo2だってMicroDrive内蔵だ。シャレにならんのでマグネットシートを剥がそうとするが、強力な接着で断念。
 この1セットの設置場所を考える。EDの場合、シフトレバーの手前にサイドブレーキのレバーがあり、その下はそのまま浅いディッシュトレイになっていたので、そこへ無造作に転がす事ができた。しかしブリットではそのようなスペースがない。DCコネクタとアッシュトレイの手前に数cmほどのくぼみがあるが、モノを置くにはどうにも狭すぎる。
 アッシュトレイはノンスモーカーズボックスに換えてあるので、ここにトランスミッタを入れよう。これだけで5,000円も取られたのだからここで使わずにどうするのか。そう思って開けてみてがっかり。何と標準のアッシュトレイの内側に布風のコーティングをしただけのものだった(本来のアッシュトレイは、バラした状態でダッシュボードに放り込まれていた)
 つまり、灰皿のあの手前にあるアコーディオン上の部分(私はタバコを吸わないので良く分からないが、恐らく灰をこそぎ落とすための歯になるのではないか)が付いたままで、小物入れとして、そしてこの小さいトランスミッタの入れ物としてすら使い物にならないのだ。
 止む無く、短いオーディオ側接続ケーブルを精一杯伸ばして、トランスミッタをそのくぼみに転がし、Muvo2はそこからシフトを跨いで肘掛下の小物入れに入れてみた。Muvo2のリモコンが本体とトランスミッタの間になるので操作はできるが、Muvo2の液晶画面は見えないし、Muvo2の電源操作が難しい。ユーザーの方はご存知のとおり、Muvo2は停止ボタンの長押しで電源オフになるのだが、リモコンのボタンの感度がいまいちで「電源オフしたつもりで切れてない」ということがしょっちゅうある。
 早速、Muvo2を繋いで純正オーディオで再生してみる。初めに気が付いたのが「音量が小さい」点。これはMuvo2側のボリュームを上げればいい…と思った。ところが実際に上げてみると、ある点以上の音量ではオーディオ側で音がひずみ、割れてしまう。これはトランスミッタのダイナミックレンジが狭いということだろうか。カセットテープアダプタでは体験しなかった問題だ。
 次に、エンジン始動から数秒間、チューナーからノイズが流れてくる点。同時に通電されているのに、トランスミッタの作動が遅いのだ。入力側の音声が遅延するわけではないが、エンジンを掛けるたびにザーザーと空電を聴かされるのはあまりいい気分ではない。
 なかなか完璧な使い心地とは言えない…が、これもカセット内蔵オーディオを選択しなかった自分のミスだ。
 カセットテープアダプタだって、始終カラカラとギアの回る音がしたし、何ヶ月も使えば磨耗して壊れたりしたではないか。トランスミッタは駆動部がないから長持ち…するだろう。むしろMuvo2のMicroDriveがどれだけ持つか、その心配をするべきか。