停電事故。

 午前中ちょっと席を外していて、自分のデスクへの帰り道に無人のサーバ室に寄り道したら、中で新人I君が一人、取り乱した様子で卓上蛍光灯を振り回しているのを目撃した。
 あまりの異様な光景に体が凍りつく。その場に立ちすくんでいるとI君が私に気付き、近寄って来た。
 893キックでも入れて蹴倒して逃げるべきか?I君の方がガタイはいいので勝ち目はねーだろうなぁ…などと切り抜ける手段を考えていると、I君が一言「ちょwどこ行ってたんすかwwインターネットに繋がらないってものすごいクレーム電話で大変すよwサーバ室に来たら停電してるし」
 停電?立ち回った先では全く停電なんかなかったし、現に今サーバ室は照明付いてるけどな?と怪訝に思いながら、I君とサーバ室内に取って返して中の様子を調べた。サーバ群を見ても、特に停電で停止したような様子はなかった。UPSや電源周りでもこの数時間で特にアラートが発生した記録はない。
 「停電て…復旧してるんじゃないのか?」
 「いやいやいや、さっきまで真っ暗だったんすよwドアも見えないから蛍光灯外して懐中電灯の代わりにしようと思ったんすけど、テーブルから外して部屋に入った瞬間に復旧して…」
 サーバ室の電源回路は3系統あって、天井の照明と複数あるサーバ群とは別回路になっているから、照明が停電してもサーバの動作には影響がない、はず。
 しかし、一部の回路だけ停電するなんてことは自分がここの保守をやるようになってから一度もなかったし、普通に考えれば、施工中の業者が切ってはいけない回路の配線を誤って切断したか、ブレーカーを落としてしまったのだろう。
 照明と同じ回路から電源を取っている機材は、このサーバ室内のHUBとゲートウェイサーバだ。どちらも停止すれば外部へ接続することはできなくなる。あいにくと(整備不良とも言えるが)これらに用意されていたUPSは故障しており、ネットワーク機材全体の更新も近々予定されていたために修理を見送っていたのだった。
 停止していたゲートウェイサーバを手動で起動し、ネットワークの復旧を確認。
 今回の工事ではトラブルが多過ぎる。そもそもサーバ室周辺は施工対象から外してもらうはずだったのだが。