事故現場。

 昨夜から具合が悪く、さらに悪化する前にと思い午前中仕事を休んで病院へ行った。それが終わり正午頃に職場の駐車場に着いたのだが、普段は人気がないはずの駐車場の片隅に人だかりができているのが居並ぶクルマの向こうに見える。その脇にはパトカーがいるではないか。
 車上荒らしでも出たのかと思い、昼食代わりのカロリーメイト12本パックが入った重いレジ袋を提げてえっちらおっちらと近づいていくと、私がブリットを止めた駐車場とは細い道路を挟んで向こう側にある別の駐車場に、3台のクルマがもつれるようにして転がっていた。助手席前方が潰れたキューブと、恐らくそれと衝突したらしい軽4トラック、その2台の衝突エネルギーが合成して向かった先に不幸にも駐車していたミラがいる。
 キューブを運転していたのは中年女性で、軽4トラックは相当高齢の男性だった。目撃者の話を聞いていると、駐車場を挟むT字路で右折しようとウインカーを挙げて停止していたキューブに対し、左方向から交差点に進入した軽4トラックが全くブレーキもかけず回避はおろかまるでキューブを目掛けるように突っ込んで衝突したという。軽4トラックはキューブと重量で競り負けたのか、衝突地点から進んで左前方にある私が停めたのと反対側の駐車場へ飛び込んで、駐車中のミラに接触して停まったようだ。
 幸い怪我人はなかったようで、警察の事情聴取も終わるところだった。現場検証を終えて立ち去ろうとする警官たちを、野次馬の中から飛び出して追う男性がいた。
 「…私、あの軽4トラックの○○の親戚なんですけども」と切り出した男性と警官の会話を聞いて怖くなった。
 「あのまま運転続けさせてもいいもんでしょうか?いつもはらはらしながら見ておったのですが」
 「正直ああまで運動神経が衰えていたらクルマの運転は危険ですが、我々から運転を辞めろとは言えん部分もあるのです。できれば皆さんの方からクルマを手放して運転を辞めるよう説得してもらえればいいですが」
 「生活に困るからと言って聞かんのですよ…」
 人に怪我をさせてからでは遅いと思うのだが。