観察。

 昨日は職場の忘年会だった。
 すぐ隣に上司が座ったのだが、開宴後30分で、彼は私の最大最強の、一生モノの「欠点」をいきなり明らかにした。
 実は私から見るとその上司自身も同じ欠点を持っている。恐らく彼も自覚しているはずだ。
 ただし、私とは対処のアプローチが正反対だ。
 簡単に言うと上司は常に攻撃的であることでその欠点を補っている。
 補っているというのは、かなり控え目な表現だな。それがほぼ完全に彼の個性の大勢を占め、だから周囲からは、彼の評価は完全に二分されている。その戦闘的な行動力が今までに生み出してきた結果を高く評価する向きと、余計な仕事を増やす人間を見下して無能扱いする口汚い野蛮人だと毛嫌いする向き。
 彼が口にする意見は正論だ。社会常識や良識原理主義者と言っていい。だから持ち込まれた仕事の上でしょっちゅう発生する現実的な矛盾やムダを、驚くほど旺盛に攻撃する。その矛盾を、まるで目の前の人間が作ったかのような勢いで攻め立てるから大抵の人は辟易する。彼を他の人々と同じ方法で納得させられる人はなかなかいない。
 彼と仕事で関わり、残念な事に彼に負けてしまった人達は、その後の仕事では手順の中に彼を組み込まないよう努力を払う。しかし彼のフィルター、例えるなら硫酸のプールを使った洗礼を突破できた人達は、その後は事あるごとに彼に意見を聞き仕事の方向性を尋ねてくるようになる。なぜなら彼の意見はやはり、正論だからだ。
 私は…。