地震。

 朝09:40頃、トーストに昨夜の残りのトンカツを置いてチーズをかけ、こんがりと焼いたのを齧ろうとしていた時、ふと停電が起きた。
 普段の停電と違い、一瞬ちらつきを挟んだ停電。
 次の瞬間、家がズドドドドドと揺れだした。
 家は築60年のボロ、10年前の能登沖地震でかなり痛んだのを無理やりリフォームして使っている。さすが家歴60年のベテランの我が家、軽く地震を受け流し…いや、つまり揺れ放題だったのだ。
 口にくわえたテラデリシャスなハイパーゴールデントーストに崩れた砂壁がぶっかかり、買って3ヶ月のREGZAがゴトンゴトンと飛び回っている。
 母親と妹は前の地震の記憶があるせいか、驚いて玄関へ向かって走り出した。揺れ続けている今外へ出れば屋根瓦の落下に巻き込まれかねない。
 そのうち揺れが大人しくなったので私も外へ出てみた。自宅を含め近所の家には外見上特に大きな破壊はない。住人も皆揃って出てきて、どうすればいいのかと不安げ。
 母親は「ここにいても怖いし、車に乗ってどっか行こう」と言い出した。家の裏は砂浜なので津波があるか?との不安がすぐ頭をよぎったが、むしろ今車を出して交通の混乱に飛び込むのか?この辺りは道が細く、軽4でもすれ違いできない場所ばかりだ。
 とにかく家に留まるように言い、自分は災害時の業務規約に沿って出勤の準備を始めた。
 父親は犬の散歩で外出していたが飛んで戻ってきて、家の中を確認してから非常呼集に応じて出勤していった。
 私も着替えてから、自分の部屋がある2階へ上がってみた。21インチのCRTモニタが転げまわった跡があり、主PC本体は安物のUPSのおかげでかろうじて稼動していた。しかしモニタが使えないので安全なシャットダウンができない。
 積み上がっていたPC用パーツの箱が大規模崩落していたので、見なかったことにする。
 下に降りてカバンを持ったところで停電復旧。そのまま出勤。
 数年前に火事で焼け落ち空き地になった場所があるが、ブリットで通りすがりに見てみると液状化現象で水が噴出した跡があった。KissDを起動しようとしたが、あいにくとバッテリーは空だった。
 職場に到着し、停電で死んだ電算システムを復旧。こんな時には忙しくなる業種なので通常の手順をほとんどすっ飛ばし、10分で仮復旧を済ませた。
 案の定、救急外来には救急車が横付けしており、処置室は呼集に応じたDrやNsでごったがえしている。指を折って血だらけの男性が処置を受けていた。
 日直だった先輩にシステム復旧を伝えて様子を聞くと、けが人や事故の通報はあまり多くないらしい。
 それにしてもいつまで経っても医事課のボスババァ達は現れる様子がない。先輩も他の部門に対して示しがつかんとおかんむりだ。
 ロビーの患者向けテレビをつけておく。ニュースでも地震被害についてはまだ情報が集まっていない様子。震度は当市が5、最もひどい輪島市で6強とのこと。
 院内のエレベータが点検なしでは使えないため、入院患者の昼食を病棟へ手渡しで運ぶ。食器の回収も同様。
 救急外来から寝たきり患者の入院のため、患者さんにシートに寝てもらい階段を使って運び上げる。
 院内の被害は少なかった。強いて言えば、検査室内に置いてあった蒸留水の水槽から揺動で水が溢れ、近くに設置してあった端末用のHUBが破損したことくらいか。