2年目、初夏。

 2021年3月24日付の記事から、久しぶりの投稿である。
 この1年以上の間、俺の眼前で膨大な数の出来事があり、そしてほとんどすべてがこのブログに備忘録として記す暇もなく記憶の彼方に消え去っていった。
 未来、振り返る機会があれば、人生の中でも一、二を争うほど混乱と緊張と変化に翻弄された日々。
 今となってはわずかな手がかりを頼りに朧気な記憶を書き出すことしかできない。
 それでも、時間があれば少しずつ遡りながら書き起こしていこうと思う。

 仕事に関する出来事については、その業務内容を推定できるような内容は今まであまり書いては来なかった。
 これはこれからも同様だ。
 もっと昔の記事にはそうでないものもあるが、こちらはそのままにしておく。

 2021年3月の記事のとおり、俺は昨年末で転職した。
 転職活動はその前年秋頃、唐突に始まった。そして、たった1社だけを対象にした活動はわずか4ヶ月で何ら困難に直面することなく成功裏に終えることができた。率直に言って年齢から考えればかなりの僥倖だ。
 活動対象を1社だけに絞ったのも自らのスキルを考えればここ以上に適した場所も、また待遇が前職同等で維持されることが確約されたところももほとんどなかったからだ。
 もちろん前職の経験が採用に結びついたのは間違いない。何度かの面接では勤務条件についてかなり好き勝手を言わせてもらった。すぐに言い過ぎたと後悔した場面もあったのだが、大部分が要求通りになった。
 重ねて言うが、年齢から考えればかなりの僥倖だと思っている。

 そして、再就職に伴い生活も大きく変化した。
 新しい職場は転勤を伴うため、10年暮らしたアパートを出て県都の社宅へ移った。
 久しぶりの一人暮らしだ。
 社宅はこれもワガママを言って世帯用の部屋数が多い物件へ入居させてもらった。代わりに平均的な社宅よりは若干古びた都営団地風のアパート群の一室となったが、最低限の設備は備わっており自分の生活に不便は感じない。
 家賃負担はあるが、駐車場費用を含めても格安だ。
 転居に当たり引越し業者は使わなかった。社宅への入居は採用期日である4月1日からと決まっており事前入居は認められなかった。やむなく最低限の家財道具と日用品をブリットに積んで当日を迎えたのだが、このブリットの大積載量が功を奏し、週末に新旧住居を往復するだけで生活可能なレベルまで荷物の搬入を終えてしまったのだ。
 今後は何年か後の転勤に備えて、前のアパートの暮らしの中で大量に溜め込んだ自分の荷物をこのゆとりある社宅へ順次移動し、暇を見ながら整理していくことになる。
 
 前の職場はアパートから歩いて10分、走れば5分の至近にあったが、新しい職場は社宅からバスで20分の距離にある。また、現在はコロナウイルス感染防止を目的に、社員をランダムなグループに分割して勤務シフトの分散化が行われている。俺は希望して出勤時刻を定時より30分早めに設定させてもらったので、前職では起床7:30、部屋を出るのが8:10だったところ、今では起床時刻は6:30とやや早い。
 実は公共交通機関での通勤は初めてで、最初の1ヶ月は戸惑いの連続だった。直通のバス路線があるため乗り換えの必要はないが、やはり朝の混雑は避けられない。ちょうど学生の登校ラッシュとぶつかることになったのだが、なぜかバスに乗車するのは女子高生ばかりで、通路に立ち乗りする際は痴漢扱いされないよう、都会の通勤電車でよく言われるように両手をつり革に挙げて過ごしていた。通勤用のカバンやバッグで相手を押したりするのも痴漢扱いされると聞き、容量が少なく不便であることに目をつぶって薄くてスリムなメッセンジャーバッグに買い替えたりもした。
 しかし、何週間も他の乗客を観察した結果、誰もそのような行動をしていないことに気が付いた。今では他の客の乗降を支障しない限り普通に過ごすことにしている。

 仕事の方は前職と異なり立場上中間管理職ではあるが当面部下はいない。
 最初の1年間はメンター役の、年齢で言えば数歳も違わない先輩の指導を受けていた。デスクワークは前職とほとんど変わらない…と言えば嘘になる。組織が巨大なだけあって電子化が進んでおり、しかし分野ごとに別体系の業務システムがそれぞれ稼働しているためその操作に慣れるまでかなりの日数を要した。
 配属された部門の業務は前職には全く無かった分野で、配属と同時に任された業務自体は比較的容易であったが、関係先の大部分が外国人であるためコミュニケーションには配慮と工夫が必要だ。
 前職で長年従事した内部IT管理についての経験は幸いにしてこの職場でも役立っている。特にIT管理部門が遠く首都圏にあり、地方の支社であるこの事業所内には専属のIT担当者こそいるものの、ITシステム管理に関する操作のほとんどを機器の利用者たる一般の社員が自ら対応することが慣例となっているため、ある程度管理側に立っての知識がある者は重宝されるのだ。

 さて、すでにGWも終わり、これから徐々に夏の気配が近づいてくる。
 去年よりはゆとりを持った日々が過ごせるだろうか。