山中にて。

 今日は持病に関する定期検査のため一日夏休みを取った。
 検査そのものは問題なく終わり、帰路に寄り道して石動山の展望台へ向かった。
 今夜はISSが日本上空を通過する予定で、19:40頃に南南東に見えるはずだ。今日は意外に雲が少ないので、展望台から見える市街地の夜景と一緒に撮影できるかもしれない。
 着いた時刻は19時前。人気のない林道の頂上にある展望台周辺は暗闇であった。

 展望台下の駐車場からうねる山道を徒歩で200mほど登った所に展望台がある。
 しかしどうも今年は登山客がいないものとみなされたのか下草刈りがされていないようで見通しが効かず、足を踏み入れるのは躊躇する。
 また空は日中の晴天から徐々に雲が増え、肝心の南の方角には星はほとんど見えなくなっていた。
 それでもせっかく上ってきたのだからと三脚を据え、6DをBBKEY2からの無線リモートで操作し車内から撮影しようと定刻まで待機したが、雲は厚くなる一方だった。
 諦めて片付けを始めようとブリットを降りて間もなく。
 林道周辺ののあちらこちらから、何かが草を踏み分ける音がしている事に気が付いた。
 キツネやアナグマなどの走り回る音なら聞き慣れているが、今夜の連中は小枝をへし折る音でかなり重量があることが分かる。
 しかも全く足を止めず足早にこちらに近寄ってくる。雲台から6Dを降ろしている間にも、背後からそいつらの鼻息まで明瞭に聞こえてくるほど距離を詰められた。
 やばい。
 三脚は足を延ばしたままラゲージルームに突き刺してブリットに乗り込み、直ちに発進。
 アクセルを踏んだかどうかという瞬間、林道脇の茂みに体長1m足らずの最初の猪が姿を表した。
 緩いシケインを抜けたところで二頭目と遭遇。こちらは体長1m越えでかなり大きく下顎の牙も突出している。こいつとウィンドウ越しに目が合い、にらみ合いながらすれ違った。
 どちらもエンジン音やヘッドライトに動じる様子は全くなかった。
 
 まぁ、熊でなくてよかった。